「なんで今それ言うの?」と思ったときに― 子どもの“見え方”の違い
「今、それ言う必要ある?」
「考えればわかることなのに、どうしてそんなことする?」

家庭や学校の中で、子どもの考えていることがわからず、
「なぜ?」と感じることはありませんか。
これまでにも、そうした相談をたくさん受けてきました。
たとえばこんな場面があります。
大人が「前を向いて」と言ったとき、「自分が向いているほうが前でしょ」と捉えることがあります。
話をしているときに「前を見て」と言えば、多くの場合「話している人の方を見ること」を意味します。
一方で、車や自転車に乗っているときに「前を見て」と言えば、それは“進行方向”を指していることもあります。
このように、同じ「前」という言葉でも、場面によって意味は変わります。
でも、その前提が共有されていなければ、
「前」とはどこなのかは人によって異なります。
そのため、言葉をそのまま受け取ることで意図が伝わりにくくなることがあります。
こうしたズレは、友達関係の中でも見られます。
ちょっとした誤解から距離ができたあと、
本人の中では「もう大丈夫」と思って、突然話しかけることがあります。
けれど、相手の子はこれまでの出来事を覚えていて傷ついている状態かもしれません。
そのため、「なんで普通に話しかけてくるの?」と戸惑い、すれ違いが生まれてしまうことがあります。
ここで見えているズレは、
本人は、「今」の関係を感じているのに対して、
相手の子は、「これまでの積み重ねの中での関係」を感じているという点です。
どちらが正しい・間違っているということではなく、
見え方や感じ方によって起きていることなのかもしれません。

こうした場面の背景には
・暗黙のルールなど、抽象的な理解が難しいこと
・文脈を読み取ることの難しさ
・言葉をそのまま受け止めてしまうこと
などが関係していることがあります。
そのため、
「前を見て」ではなく、「私の目を見て」や「進行方向を見て」といったように
「何を指しているのか」を具体的に伝えること。
また、「なんでそんなことするの?」ではなく「どんなふうに感じているの?」と尋ねてみること。
そうした関わりが子どもにとってのわかりやすさや安心につながることがあります。

うまくいかない場面が続き、怒られたり注意されることが増えると、
子ども自身も「頑張っているのにどうしてうまくいかないんだろう?」と感じ、
自信を失ってしまうことがあります。
これからを生きていく子どもたちが、自分らしく安心して生きていくためにも
「どうして」と考える前に「この子には、どう見えているんだろう」と立ち止まってみること。
そうした視点が、
子どもとの関わりを少しやわらかくしてくれるかもしれません。
※実際の場面をもとにしていますが、内容は個人が特定されないように一部調整しています。