メンタルトレーニングって何するの?
「メンタルトレーニングって、何をするんですか?」
以前、そんなふうに聞かれることがありました。
「ポジティブになる練習ですか?」
「緊張しなくなるんですか?」
そんなイメージを持つ人も多いのかもしれません。
実際に私が関わっていた中で行っていたのは、
もっと地味なことでした。

これまで、私は何人かのアスリート向けのメンタルトレーニングにも関わってきました。
そこで感じたのは、
メンタルは「気合い」だけでは支えきれない、ということでした。
もちろん、気持ちの強さは大切です。
スポーツの場面では「気合いを入れろ!」をよく聞く言葉です。
もし「気合い」が、
ただ力を入れることだとしたら、どうなるのでしょう。
肩に力が入る。
呼吸が止まる。
視野が狭くなる。
すると、相手を見るより、
「負けたくない」という気持ちばかりが前に出てしまうことがあります。
逆に、力が抜けている時の方が、
呼吸を合わせる。
タイミングを待つ。
相手の動きを見る。
空気を読む。
そんなことが自然にできる場合もあります。
そう考えると、
「気合い」は、ただ力むことではないのかもしれません。
むしろ、自分の感覚を使えるように、
余計な力を抜いていくこと。
そんな“静かな集中”も、
ひとつの気合いなのかもしれない、と感じています。
でも、人は疲れるし、不安にもなる。
迷う日もあれば、崩れる日もあります。
だからこそ、
「頑張れるようにする」より、
「崩れにくくする」準備が大切になることがあります。

例えば、細かい目標設定。
「チャンピオンになる」という大きな目標だけでは、
途中で苦しくなってしまうことがあります。
だから、
今日は何をするのか。
今週はどこを意識するのか。
そんなふうに、
少し手が届く目標まで小さくしていく。
すると、「できた」が積み重なりやすくなります。
それから、ルールを決めること。
練習前の過ごし方。
食事。
休み方。
細かいことのようですが、
人は迷いが増えるほど、疲れやすくなることがあります。
だから、「気分で決める」を減らしていく。
それだけでも、心の負担が軽くなることがありました。
ボクサーの場合には、減量の失敗を防ぐために、
「崩れるパターン」を先に考えることもありました。
どんな時に焦りやすいのか。
どんな流れで無理をしやすいのか。
「失敗しない人」を目指すというより、
崩れた時に戻れる準備をしておく。
そんな感覚に近かったように思います。
そして、意外と大切なのが、支えてくれる人の存在です。
ひとりで頑張り続けることは、簡単ではありません。
話を聞いてくれる人。
応援してくれる人。
普段通りに接してくれる人。
そういう存在があることで、
踏ん張れることもあります。

メンタルトレーニングというと、
「心を強くすること」を想像する人もいるかもしれません。
でも実際には、
不安がなくなるわけではありません。
緊張もしなくなるわけではない。
それでも、自分の状態に気づきながら、
少しずつ整えていく。
そんな作業なのかもしれない、と今は感じています。